ジョンヒョンの遺した贈り物 'Poet | Artist' 『ビルボードUSA』180123
Poet | Artist が出てからちょうど1年の記念日(北米時間)です。どんな記事を訳そうかさんざん迷ったのですが、素直に『ビルボード』からリリース情報を振り返っておこうと思います。まだ記憶が生々しい時期の記事なので、つらく感じる方もいらっしゃるはず。無理だと思ったら、どうか飛ばしてくださいね。記録として残したいだけなので……
ジョンヒョンの遺した贈り物 Poet | Artist
テイマー・ハーマン『ビルボードUSA(K-Town)』 1/23/2018
2017年が、ジョンヒョンという歌手が急逝し K-pop 業界が激震したまま終わりを迎えた年だったとするなら、今週月曜(1月23日)にリリースされたアーティスト最後のアルバムは、ほろ苦い締めくくりの感覚を2018年初頭にもたらすものだといえるだろう。ジョンヒョン2枚目となるフル・スタジオ・アルバム Poet | Artist は、彼が生前録音していた作品であり、この K-pop スターのキャリアや際立つ音楽性の証(あかし)だ。
感傷性とリズミカルなダンス・ポップが入り交じる遺作 Poet | Artist は、ジョンヒョンのファンにとって別れであると同時に、彼の思い出を音楽的にたどる旅となる。表題の「詩人」「アーティスト」は最初と最後のトラックに反映されている。トラップとトロピカル・グルーヴを組み合わせたスムーズな “Shinin'”(一曲目)は「アーティスト」ジョンヒョンの集大成であり、SHINee “View” のディープ・ハウス的サウンドに “Deja-Boo” のスムーズさと、”She Is” のエネルギーを組み合わせたものだといえるだろう。一方、最終曲の “Before Our Spring” は「小品集 Op. 1」や「小品集 Op.2」に表現されたジョンヒョンの「詩人」としての叙情性を反映している。「こんなこと言うのは馬鹿げてるけど/ぼくは君の前に出ていくのが怖いんだ/理解できなくても大丈夫、大丈夫/まだ時間はたっぷりあるから/春がくるまでには」 優しいジャズ・メロディに乗せて、ジョンヒョンは心のこもったファルセットでそう歌う。
この二曲に挟まれたトラックでは、ジョンヒョンがこれまでソロ作品で探求してきたサウンドがふたたび披露されている。"Take The Dive,” “Just For A Day,” “Only One You Need” の軽快なEDMしかり、"I’m So Curious” や “Sightseeing” のファンキーなジャズ・ポップしかり。
このアルバムにはジョンヒョンがファンに向けて送った思いやりのある瞬間やメッセージが溢れている。たとえば、"Shinin’" でジョンヒョンは「ずっと君のそばにいるよ」と優しくささやく。"Grease" では意味のないごたごたをきれいさっぱり片付けたいと言ったあと、哀切なダンスグルーヴに乗せて「ぼくの思い出は捨ててくれ、あげたものはぜんぶ捨ててくれ」と歌う。「そんなものはずっと前にぼくにとって意味を失ってしまったんだ」
Poet | Artist のリリースとともに発表された “Shinin’” のミュージックビデオは明るいディスコ風クリップで、カメラに向かって突き刺すような視線を送りながらしなやかに踊るジョンヒョンを前面に押し出している。このビデオはジョンヒョンが音楽スタジオの前に立ち、肩越しにカメラを見つめるクローズアップで終わる。それはジョンヒョンという人にいかにもふさわしい、最後の姿だ。
昨年末のジョンヒョン(本名キム・ジョンヒョン)急逝のあと、韓国エンターテイメント界と全世界に広がる K-pop ファンダムは悲しみと衝撃に襲われた。このアーティストは鬱に苦しんだ末、2017年12月18日、27歳でみずから命を絶った。ジョンヒョンはシンガーソングライターとしての作品と、K-pop を代表するボーイバンド SHINee のメインボーカルとしての作品を遺している。Poet | Artist の売上は遺族に贈られ、同じような苦境と戦うアーティストを支える財団設立のために利用される予定だ。
”Shinin’” のミュージックビデオはこちら。
JONGHYUN 종현 '빛이 나 (Shinin’)' MV
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やっぱりちょっとつらいですね。 うん。
あえてドライな情報をひとつ。この Poet | Artist は、ファンの購買運動の成果もあって、2018年のガオン年間チャート、ソロアーティスト部門売上1位に輝きました。批評的にも各種年間ベストで必ず上位に挙げられていて、K-pop にとって重要な転換点となった2018年のひとつの到達点という評価を与えられています(まだ和訳できていないものは順次ご紹介します)。
上の記事でも指摘されてたように、Poet | Artist って、ほんと、BASE や SHE IS のファンキーでダンサブルな商業路線(アーティスト)と、小品集シリーズのセンチメンタリズム(詩人)とがきっちり組み合わされた傑作だと思うんですよね。しかも、編曲までジョンくんが関わっているセルフプロデュース作品。
病気を抱えながらここまで……本当にすごい人なんだと改めて感じます。そして切ない。
Poet | Artist のブックレット写真。SHINee の The Story of Light ヴィジュアル(特に"デリロガ Good Night" のMV)とつながってきますよね。
ファンの方がまとめてくださったもの。
ミノさんのファンミーティング Best CHOI's MINHO 告知ポスターでも右上の写真が使われていたことを思い出しまして。
来月予定されているミノさんのファンミーティング日本公演日程が、ちょうどあの "From Now On" 公演の一年後くらいに当たるんだなーと気づきました。
年末のあの時期に日本に来てくれたキーくん。
あの日本公演の時期にまた来てくれるミノさん。
ジョンくんもそこにいてくれますように。
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