キツネをめぐる冒険

英語圏で SHINee を追いかける和訳アーカイブ

SHINee が語る 'The Story of Light' 連作と10周年『ビルボードUSA』180615

おはようございます(北米時間)。キーのソロ・アルバム FACE のリード曲が「센 척 안 해(強いふりしない)One of Those Nights」になるという発表が昨日、SHINee 公式から出ましたね。夏に「泣いてもいいんだよ」ってファンに言っていたキーくんをまた思い出しています。

というわけで、前回ちょっと引用したキーさんが素敵な記事を全訳してみます。『ビルボードUSA』K-POP セクションに載った The Story of Light シリーズについてのインタビューです。

 

SHINee が語る 'The Story of Light' 連作と10周年

テイマー・ハーマン
ビルボードUSA (K-Town)』6/15/2018

https://www.billboard.com/files/media/01-SHINee-press-photo-SM-Entertainment-2018-billboard-1548.jpg

 

K-POPの世界では新作が出るまでに1〜2年、あるいは3年4年かかることは稀ではない。そうやって時機をあたためてヒット作をじっくり待つわけだが、こと SHINee に関して言えば、そうしたことが問題になったことは一度もない。

SM エンターテイメントから2008年にデビューした5人組ボーイバンド SHINee は、スムーズな R&B ダンストラック「Replay(おねえさんはとてもきれい)」でデビューしてからというもの、ひらすら成功の道を走りつづてきた。彼らはダンスポップをつねに新しい方法で再発明し、それを複雑かつ洗練されたパフォーマンスと組み合わせた楽曲をリリースしつづけて、十年経ったいま、韓国ポップ界のもっとも革新的なアーティストとして知られるようになっている。

そんな SHINee の最新作が、10周年を記念する三部作 EP The Story of Light [以下TSOL]だ。うち二作――タイトル曲 "Good Evening” を含む第一作(5/25)と同 "I Want You” を含む第二作(6/11)――がすでにリリースされ、"Our Page" をリード曲とする第三作が6/25に発表される予定になっている。

この連作は SHINee と、SHINee World(Shawol)と呼ばれるファンにとっては記念すべき10周年作品となる。だが、この記念日は哀しみとも切り離すことができない。TSOL三部作は、メンバーのジョンヒョンが昨年12月にこの世を去り、SHINee が4人体制になってから初めてのアルバムになるという意味で、グループの過去を記念する道しるべであると同時に、未来を象徴するものにもなっているからだ。5人全員の声を全編フィーチャーしたものとしては、今年3月に発表された日本語版ベストアルバム From Now On が最後になった。

しかし、これまでにリリースされたTSOL 第一作・第二作は、そうした冷たい空気に支配される代わりに、むしろトロピカルハウスや R&B から、ドリーミーなエレクトロ・ポップまで、実に生き生きとしたサウンドに彩られている。そして物理的なアルバムそのものも五方色(オバンセク)という韓国の伝統色(黄、赤、青、白、黒)にくっきりと支配されている。

「ぼくらの色というと、いつも、ミントとかピンクとか、すみれ色とか、すごく精妙な、これとは違った色だったと思います」キーはソウルからのビデオ通話で、グループのイメージにおいて支配的だった色使いについて語ってくれた。たとえばバンドの公式カラーは「パールアクア」と名付けられた、緑がかった柔らかいブルーだ。「でも、今回はほんとうに基本的な、でもこれこそ SHINee だというスタイルをお見せしたかったんです」 たしかに一連のアルバムはそれをやってのけている。三部作のそれぞれが5曲のスマートに作り上げられたトラックを収録しているが、どのアルバムにおいても、90年代 R&B 風メロディと現代ダンスビートが見事に融合した音のインスピレーションのあいだを、4人の表現力豊かなヴォーカルが軽やかに飛びまわっているのだ。

この三部作はグループがスポットライトを浴びて過ごしてきた十年分の成長を象徴している。その十年のあいだに、5人のポップスター候補の少年たち――オニュ(イ・ジンギ)、キム・ジョンヒョン、イ・テミン、キー(キム・キボム)、チェ・ミノ――は、グループ SHINee としての仕事とソロ活動の双方を通じて、韓国エンターテイメント界最高のアーティストへと成長を遂げた。オニュは言う。「十年一緒にいようって決めてたんじゃないんです。『十年一緒にやろうよ』って先に約束してたわけでもないし。一緒にやっているうちに、自然にそうなったんです。それに、いつも全力を尽くしてきたからこそ、ここまでやってこれたんだと思います」


目をキラキラさせた十代の少年たち――最年少のテミンは2008年5月のデビューのとき、たったの14歳だった――から、K-POPで最も尊敬されるパフォーマーへ。その変貌は、ハードワークとひたむきさによってこそ成し遂げられたものだった。

出会った音楽スタイルをすべて自分のものにしてしまう SHINee の能力、それから制作チームの創造力は、これまで何度も、韓国で特定のジャンルが流行するきっかけを作ってきた。たとえば、2015年に “View” が口火を切ったディープハウス旋風がそうだ。TSOL においても、112の1997年ヒット曲 “Cupid” をシンセでリメイクしたシングル “Good Evening” や、第二章のリード作 “I Want You” に、みずみずしいハウスへの傾倒が見受けられる。だが、 三部作を締めくくるシングル “Our Page” はむしろ2008年にグループが出発したときのカラー、コンテンポラリーR&Bの色合いが濃い。

「10周年を迎えられて本当に嬉しく思っています」とミノは言う。「やっと実感が湧いてきたところです。10周年を迎えたんだなぁって」 ミノは、もともとキーやテミンとともにSMでラッパーとして育成されたが、その後、三人はそれぞれヴォーカリストとしての才能を開花させてきた。

しかし、10周年まであと半年という2017年暮れ、グループのダイナミクスはジョンヒョンの27歳での死によってばらばらに引き裂かれた。残された4人は新作 TSOL で卓越したパフォーマンスを見せ、SHINee がこれまでと変わらず輝いていくことを証明しているが、そこにはリードボーカリストであり、シンガー・ソングライターとしても豊かな才能に恵まれたジョンヒョンの不在もまた感じられる。 “JUMP” の共同制作者カーティス・リチャードソンは Twitter でジョンヒョンのあの特徴的な声がこのトラック[JUMP]から聞こえてくる気がする、と述べている[※後述]し、おなじように、"Good Evening" のMV冒頭に登場する誰も座っていない椅子が、この愛されたスターを象徴していると考えるファンもいる*1

4人のメンバーは5/30放送回の韓国人気番組 Radio Star でジョンヒョンについて心をこめて語ったが、それ以外の場面では、彼の死ではなく、彼ら全員がともに過ごした十年を祝福するこのアルバムにこそ、力を注いできた。「光の物語」という、そのタイトルそのものが、この三部作の物語としての性質を語っている。今月初めのソウルでの記者発表で、グループは、“Good Evening” アルバムが世間から見た SHINee を表現し、 “I Want You” アルバムが自分たちから見た SHINee を、そして最後の “Our Page” はまた違ったグループの姿を反映していると明かしている。

SHINee のことを考えるとき、みなさんは光と色を思い浮かべると思うんです」とキーは言う。「でも、ぼくの感覚では、光には明るさと暗さの両方がある。だから、他の人に光とは何なのか決められてしまうよりも、ぼくらは光が何を意味しているのか自分たちで定義したかった。ぼくらは SHINee だから、自分たちの道を、自分で照らし(shine)たかったんです

 

 

www.billboard.com

++++++++以上++++++++

 

 

 

先に注記として、文中で言及されているTwitter発言を引用しておきます。 

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JUMPのサビのところで、あの素晴らしいジョンヒョンの声が聞こえるような気がしてしまうのはなぜなんだろう? ...俺の気のせい? 耳が俺を騙そうとしてるのかな? あの子はとてつもなく独特で、めちゃくちゃかっこいい声をしてた。#会いたいよ
ーカーティス・リチャードソン Curtis Richa*2 

なんかもうこれ読んだだけで泣けて泣けてたまらないのですが。

 

 

そう、でも、今日はキーくんの話もしたかったんです。この記事の最後にあるキーの言葉を日本語の世界に置いておきたかった(インタビューが韓国語で行われていた場合、重訳になるので、メンバーの言葉が字句通り正確ではないかもしれないことを予めお断りしておきます。ごめんなさい)

  • ぼくの感覚では、光には明るさと暗さの両方がある。だから、他の人に光とは何なのか決められてしまうよりも、ぼくらは光が何を意味しているのか自分たちで定義したかった。ぼくらは SHINee だから、自分たちの道を、自分で照らしたかったんです。(今回インタビュー)
  • ぼくの心は飾りなんかじゃない(キーくんが書いた"You & I"の歌詞より)
  • ぼくの行動はぼくの真実(アルバムFACEジャケットより)
  • 強いふりしない(タイトル曲)

……なんかもう見事なほど一貫していると思ったんです。光も闇も、痛みも、包み隠さないで、ちゃんともっている。そこには嘘はない。他人が言うことにねじまげられたくない。それがキーって人なんだなって。

 

 

最近、英語圏のシャヲルさんたちのTwitterをぼんやり眺めてたら、たまたまジョンくんがキーくんへ送った素敵なメッセージがリツイートで流れてきてたんですが、わたし、心が汚いから最初は「またまた嘘でしょ、出来すぎじゃん」なんて思ったんですよね。

 

でも、探してみたら、ちゃんと実在するメッセージだったんですよ。しかも元は日本語で。これです。

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KEYさんにひと言!
我が道を進んでいる姿が、見ていてとても気持ちいいので、これからもそのままのKeyでいてほしいです。

―ジョンヒョン 雑誌『KOOL』Vol. 1 (2010) より[元記事はここで読めます]

 

一瞬、出来すぎのネタじゃないかって思った自分を恥じると同時に、ジョンくんに思い出させてもらってなんだか嬉しくなってしまって。

ジョンくんの好きなキーくんはそのまま我が道を進んでいて、見ていてとても気持ちがいいってこと。

ほんとうだね。

 

もうひとつ、世界のシャヲルさんが思い出させてくれたこと。ACE/BASE/FACEラインに poet | artist も入れてちょうだいねって。

ここにうちのクイーン poet | artist という今年のベストアルバムを付け加えておくのはわたしのブリンガー[※英語圏では bling bling ファンは blinger, 炎のカリスマ flaming charisma ファンは flamer と呼ばれています。他は知りませんwとしての使命だから。この子を外さないであげて!

 

このアルバムのジャケット下部に書いてあるメッセージは、物理的には離れていても心理的空間ではいつもいっしょにいるっていう、ジョンDの有名な言葉でしたよね。あーーーーもうーーーー。

キーくんの話をしてたんだけど、今日はもう、先に二度もテミンをパクったジョンが優勝、ってことにしていいかな。だって、あなたにはかなわない。今日もジョンが大好きだ。

 

そしてTSOLの話はどこいった……(また今度)ちょっとその前に仕事してくる!

 

💎和訳記事インデックス

*1:[訳注]ここで記者はファンのツイッター発言を引用しているのですが、これは事実誤認から広まった噂なのでリンクはしません。ステージ版をみてもわかるように、椅子は最初から間違いなく4脚なのですが、冒頭、立ち位置の関係で5脚あるように見えている写真がクロップされて出回り、それがジョンの分だと早合点したファンがいたようです。

*2:この方は作曲家・プロデューサーとしてジェニファー・ロペス、リアーナ、安室奈美恵東方神起などに作品提供している方のようです。テミンの "MOVE" も担当[wiki