キツネをめぐる冒険

英語圏で SHINee を追いかける和訳アーカイブ

SHINee 楽曲の元ネタを聞いてみよう【その2】

さて、SHINeeのサンプル/カバーネタをひたすらまとめる2回め(前回はここ)は、やっとファーストアルバムを終えて、そのあとへ突入。でもやっぱり初期作品が圧倒的に多いですね。

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Juliette

サンプル元 Corbin Bleu "Deal With It" (Another Side, 2007) 
これサンプル扱いなんですか? カバーだよね? 
この人は High School Musical やディズニー・チャンネルに出てたミュージカル俳優(ティーン・アイドル)のようで、さすがに歌もダンスも破格に上手いですね。がっちりした体格だけどオニュと同年生まれで当時18歳。PVのウェストサイド・ストーリーみたいな(もしくはMJの "Beat It" みたいな)ダンス対決風の群舞が個人的にツボです。ちなみに、原曲を書いた(共作)のは前回からよく出てくるレミーさん。

SHINee "Juliette" (Romeo EP 2009) かわええ。日本語版も大好き。
いや、なんでいま原曲のウェストサイド・ストーリー風振り付けが良いって言ったかというと、ウェストサイド・ストーリーって、そもそも舞台をアメリカに移した「ロミオとジュリエット」だったじゃないですか。だからこの曲に「ジュリエット」って歌詞をつけたジョンくんは紛れもない天才。賢い。

 

차라리 때려 Hit Me 

カバー原曲 Marques Houston "Case of You" (2009)

うむ。マーカス・ヒューストンはR&Bジャンルで着実にキャリアを重ねている歌手・俳優のようなんですけど、こういう曲ってどうやって見つけてくるんですかね。

SHINeeカバー "차라리 때려 Hit Me" (Romeo EP, 2009)

なんたってジョンキーがすばらしいんですが、やっぱりオニュの声が入った瞬間、原曲とテイストが違う曲になるのが物凄いとしか言えない。名付けてオニュ・シフト。

ところで「口喧嘩して傷つけ合うくらいなら殴ってくれ」っていう病んだ歌詞なのに、この動画なんでこんな写真なんだろう。ミノがかわいすぎ。初期音源ってジョンヒョン+オニュ+キーの三人がひたすらR&B的なうまさを見せつけるなかで(それはそれでうっとりなんだけど)ミノの甘い甘い歌声だけが「アイドル」ってことを強烈に主張してきますよね。安心してR&B聞いてるつもりなのに、ときどき不意にミノ声を食らうと「あがあああ!♡♡好き♡♡」って心臓をかき乱されること間違いなし。それがボーイバンドの良さ。←

ちなみに同じ曲を同じ年にOmarionという人もカバーしていますが、こちらは元曲と寸分たがわぬ作りでちょっと退屈でした。SHINee はちゃんと SHINee なのが尊い

 

 A-YO

カバー原曲 Denice Stone "Eh-Yo" (2009)
トロント出身のトリニダード・トバゴR&B歌手ってこと以外、英語でも情報が出てこないナゾの歌手。これも出処がわからないですね。

SHINee "A-Yo" (Lucifer / Hello, 2010)  
この動画ぜんぶ楽しいですよね。見どころ多いけど、1:50 からのミンキーのガチャガチャを見逃すな(もはや曲の説明じゃない

 

Hello

原曲 Mohamed Ali "Holla" (Keep It Simple, 2009) これもまんまカバーの例。
この方もデンマークの X Factor 勝者で、お名前の通り中東系(エジプト/イラク)だそう。テミンと同い年でまだまだ若いですが、北欧好みの金属的な声がすごい迫力です。SMエンタ界隈で仕事してるデンマーク人作曲家Lars Halvor Jensenの作品(共作)。

SHINee "Hello" (Hello, 2010) 
かわいいかわいい。みんないい。ちゃんと SHINee の曲になってて偉い。MVも好き。ずっと歌ってくれるのが好き。あぁでもやっぱりオニュはオニュという名前の楽器 ←もうやめます

 

 


さて、2010年代に入るとカバーはなくなり、激渋サンプルがちょこっとという状態になります(少なくともリスト上では)。もちろん、はっきりしたカバーというかたちじゃなくても、きっと似た曲はあるんだろうなと思います。わたしはファン歴が浅いのですぐには思いつきませんが、たとえば、日本語曲の"Boys Meet U" とか、PVの撮り方からしても One Direction "What Makes You Beautiful" 的なボーイバンド路線で「あえて」作ってるのは明らかですよね。まぁでもそれはサンプリングとかカバーじゃないので。

以下、一応、2010年代の激渋サンプルを見てみます。

Seesaw

Gradys Knight & The Pips "And So This Is Love"
サンプル。イントロ部分のターラッ♫っていうギターリフ。

SHINee "Seesaw" (The First 2011) 冒頭からのリフ。わかるかな。

알람시계 Alarm Clock

サンプル元 Isaac Hayes "A Few More Kisses to Go" (Don't Let Go 1979)
これはイントロのタリラリラタリラリラ〜っていう印象的なフレーズだけ借用

"알람시계 Alarm Clock" (Sherlock EP 2012) 0:15- 
相当速くなってる。これもだいぶ好きな曲です。

 

 


この Sherlock EP 収録の曲で、カバー&サンプリング路線がいきなり途切れます。これは Misconceptions あたりから本人たちが「SHINee だけの音楽的カラーを」ってことをしきりに言っているのと重なる流れではあります。

 

ただ、SHINee のサンプリング史はそこで終わってはいなくて、実は、2018年のカムバック "デリロガ Good Evening" で久々にやってるんです。で、ひさしぶりにやったと思ったら、これがかなりわかりやすいサンプリング。

そうなると、10周年カムバック作品の "Good Evening" は、ある意味、原点回帰の一曲だったといえるのかなという気がしてきました。見てみましょう。

데리러 가 (Good Evening)

サビをサンプリングしてます→ 112 "Cupid" (1996) 1:20-
アメリカで90年代R&Bを聞いて育った人なら誰でも分かるくらいの懐かしソングだそう。わたし、そのころ日本にいたけど、かすかに覚えてるような。いい曲ですよね。

"데리러 가 (Good Evening)" (Story of Light, 2018) 0:40- だいぶ速いですが一致

※原曲の作曲者 Marvin Scandrick (112メンバーで、グループ内では Slim という名前)が"Good Evening" 作曲者のひとりとしてクレジットされています。原曲 "Cupid" の歌詞は何を言っても曲解して受けとめてしまう彼女に「ぼくの言葉をそのまま信じてよ」と歌っているものなんですが、そうした伏線が"Good Evening"を解釈する上でも大事だと言う人がいます。このへんはまた機会があったら、いつかまとめてみたいと思っています。

 

 

番外 Burno Mars "Press It" / Taemin "Press Your Number"

カバーではありませんが、聴き比べが面白い曲。ブルーノ・マーズ作曲の "Press It" を購入して温めていたSMエンタが、テミンのデビューに合わせてお蔵出し。テミンが歌詞を書いて、"Press Your Number" として発表されたことで知られている曲ですよね。一時期、ブルーノのデモ音源がネット上に存在していたようなのですが、いまはこんなものしか見つかりませんでした。が、聴き比べはできます(ヘッドフォン右からブルーノ、左からテミン版が聞こえます)。ブルーノ版の冒頭で "The Stereotypes" って言ってるのがわかります。ブルーノ版がどこまでもブルーノ色なら、テミン版はちゃんとテミン色で素敵。

 

まとめ

こうして振り返ってみると、カバーやサンプリングをうまく使いながらR&Bボーイバンドというコンセプトを打ち出すファースト&セカンド・アルバムがあって、そのあと Sherlock EP→ Dream Girl (Misconceptions) → Everybody EPの怒涛の波状攻撃で一気にオリジナリティを固め、傑作Odd (Married to the Music) へ、という流れなのかなという気がしました。←嘘かもしれない。ファン歴が浅いので。*1

 

 


さて、ここから余談・蛇足です。

 

最近、たまたまジェイソン・デルーロのこの曲を聞いて SHINee の "Prism"を思い出してしまって(↓特に0:30のバァァァァックって箇所と、Prismのサビ「ネマム baby ビチュアアアアアッ」ってとこ) それ自体はたぶん偶然の一致なんでしょうけど、そこからいろいろ調べ始めたら、SHINee のソングライディングチームの方がジェイソンとも仕事してることがわかって震えたところです(しかもひとりじゃない*2)。つながりますね。しかし、ジェイソン・デルーロってうっとりするほどいい声ですよね。この世の宝だと思っています。エロすぎるのが難点だけど ←公の場で再生不能

 

それから、最近すごくよく耳にするビービー・レクサという女性歌手・作曲家がいて、Spotify でお気に入り登録していたんですが、この方がなんと以前 "Lucifer" を書いた人(共作)だと分かって椅子から転げ落ちそうになりました。ま・じ・で? 彼女の一番有名な曲は全米トップ10に入ったこの曲ですが(サビから出ます)

↓こっちの曲のほうが "Lucifer" ぽいかな? それにしても SHINee に裏方で関わった人がそのあとグローバルに売れるなんて、すごい世界に生きてるなぁと思います。ちなみにビービー・レクサは最近トーマス・トールセンとも仕事をしていて、SHINee 人脈、つながるどころか交錯してきました。というか、K-POP大手事務所のすごさがやっとわかってきた。ガクガク

 

さらに脇道にそれますと、やはり先月出たばかりのこの曲("Polaroid" ↓)がかかるたび、キーくんの "Forever Yours" を勝手に思い出してます。リアム・ペインって歌がうまくて器用ってイメージしかなかったけど、よく聞くとわりと個性的な声で、キーくんとタイプが似ているような気がしています。リアムはご存知、X Factor 出身ボーイバンド One Direction (活動休止中)メンバー。この曲は、“君と出会ってポラロイド撮って財布に入れて大事にしてるけど、ポラは色褪せるからダメ、君に会いたい”っていう歌詞がかわいい、ジョナス・ブルーによる2018年版EDMポップの教科書的トラック。

 

 

あぁ、やっぱり SHINee から広がる世界は楽しい。

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ほとんど自己満足ですが、おつきあいありがとうございました! あなたの新しい一週間が音楽に満たされますように。

 



サンプリングやカバー情報のソースはこちら:

まとめの前編はこちら。

littleprincesfox.hatenablog.com

*1:現実的なことを書くと、デビュー当初は制作費の問題があって、出来合いのものをうまく活用していたけれど、人気が出るにしたがって豪華制作陣とオリジナル作品を作れるようになってきたということはありえますよね。このインタビューでも新しいことにチャレンジできるのはファンのサポートのおかげ、と言っているし。

*2:散々出てきた SHINee 初期プロデューサー、トーマス・トールセン[wiki]がジェイソン・デル―ロと仕事しています。それから"Good Evening" の作曲・プロデュースをしている The Fliptone という人たち[wiki]もジェイソンの初期作品を手がけているようです。